相続税の納税資金を確保する方法

 

納税資金の確保
相続対策のひとつに相続税の納税資金の確保があります。ある程度の財産をお持ちの方は、仮に何らかの対策により相続財産の評価額を減少させることができたとしも、課税対象となる相続財産の価額がゼロになることは通常はないため、納付税額が生じることになります。
相続税の納付は、金銭による一括納付が原則になりますので、相続対策を行ううえで、納税資金の確保は重要な検討課題となります。

 

保険商品の活用

納税資金の確保のための手法にはいくつかありますが、以下のような保険商品を活用した手法が一般的なものといえるでしょう。すなわち、契約者(保険料の負担者)および被保険者を被相続人とし、保険受取人を相続人とする生命保険を用いた手法です。
保険事故(保険金の支払い要因となる事象)が生じた場合、死亡保険金が保険会社から相続人へ支払われることで、相続人は受け取った保険金を相続税のの納税資金に充てることができます。
この場合、死亡保険金はみなし相続財産として相続税の課税対象とされますが、『500万円×法定相続人の数』に相当する額の非課税枠が設けられていることから、非課税枠の範囲内で死亡保険金を受け取る限りにおいては、受け取った死亡保険金は課税されずに、その全額を納税資金の原資とすることが可能となります。
 

資産構成の見直し

財産のほとんどを不動産が占めるため、相対的に現預金の割合が低い場合(流動性が低い場合)には、将来の相続税の納税資金を確保するために、事前に資産構成を見直して流動比率(現預金の比率)を高めておくことが必要となります。
使用していない別荘や遊休地、立地や状態の悪い土地などはあらかじめ売却するようにしましょう。不動産はその性質上、短期間のうちに希望する価格で売却できるとは限りませんし、いざ相続が発生してしまうと、申告・納付期限まで10ヶ月しかないことから、納税資金を捻出するために価格を下げてやむなく売却することにもなりかねません。不動産売却による資産構成の見直しを行うにあたっては、時間をかけてじっくりと進めていくのが望ましいと言えるでしょう。

 

自社株式の売却

企業創業者が自社株式を保有している場合は、その株式を自社に買い取ってもらうことで、現物資産である自社株式を現金に変えることができます。なお、自社株式の買取りには、買取り側(自社)においては買取りに必要な資金が十分に用意されていること、譲渡する側(創業者)においては、譲渡価格の妥当性、みなし配当課税など税務上テクニカルな論点がありますので、自社株式の譲渡を行うにあたっては専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

また、自社株式の相続等による移転においては、非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予制度(事業承継税制)を活用する方法もありますので併せて検討されると良いでしょう。

 

不動産の売却には相当程度の時間を要するため換金が容易ではないこと、中小企業の株式(自社株式)の大半は非上場株式であるため、評価の高低に関係なく他者への譲渡による換金には期待が持てないことから、これら現物資産に係る相続税の納税資金を確保は相続対策として大変重要といえます。当事務所では相続対策・株価算定・税務申告から延納・物納に関する相談も承っております。港区千代田区において相続対策をお考えの方はぜひ当事務所にご相談ください。