新・事業承継税制について

 

事業承継税制
平成25年度税制改正により、非上場株式等についての相続税および贈与税の納税猶予および免除の特例(以下、『事業承継税制』といいます。)の適用要件の緩和、手続きの簡素化が図られました。
これらの改正事項は、平成27年1月1日以後に相続もしくは遺贈または贈与により取得する非上場株式等に係る相続税または贈与税について適用されます。
また、平成30年度税制改正において、上記の事業承継税制について10年間の時限措置として特例的な取扱いが創設されています。

 

非上場株式等についての相続税の納税猶予および免除の特例

後継者である相続人等が、相続等により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式等を被相続人(先代経営者)から取得し、その会社を経営していく場合には、その後継者が納付すべき相続税のうち、その株式等(一定の部分に限ります。)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予され、後継者の死亡等により、納税が猶予されている相続税の納付が免除されます。

(注)非上場株式等とは、中小企業者である非上場会社(資産管理会社等の一定の法人を除く。)の株式又は出資をいいます。

 

非上場株式等についての贈与税の納税猶予および免除の特例

後継者である受贈者が、贈与により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式等を贈与者(先代経営者)から全部又は一定以上取得し、その会社を経営していく場合には、その後継者が納付すべき贈与税のうち、その株式等(一定の部分に限ります。)に対応する贈与税の全額の納税が猶予され、先代経営者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税の納付がが免除されます。

 

特例を受けるための要件

この特例の適用を受けるためには、「中小企業における経営の継承の円滑化に関する法律」(「円滑化法」といいます。)に基づき、会社が「経済産業大臣の認定」を受ける必要があります。なお、「経済産業大臣の認定」を受けるためには、原則として、相続開始後8か月以内(贈与の場合は贈与の日の属する年の翌年の1月15日まで)にその申請を行う必要があります。

 

経済産業大臣の認定を受けるにあたっては下記に係る要件について充足することが求められるため、充足状況についての詳細な検討が求められます。

・ 非上場株式等を発行する会社に係る要件
・ 先代経営者である被相続人(贈与の場合は贈与者)に係る要件
・ 後継者である相続人等(贈与の場合は受贈者)に係る要件
・ 猶予される税額に係る担保の提供

 

相続時精算課税の適用について

平成29年度税制改正により、非上場株式等についての贈与税の納税猶予および免除の特例の適用を受ける場合においても、その贈与税額の計算にあたって、相続時精算課税を適用することができるようになりました(この改正は、原則として平成29年1月1日以後に贈与により取得する非上場株式等に係る贈与税について適用されます)。

 

事業承継税制の特例措置について

平成30年度税制改正により、上記の事業承継税制(以下、「一般措置」といいます。)に加えて、10年間の時限措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引き上げ(80%から100%へ)等が手当てされた特例的な取扱い(以下、「特例措置」といいます。)が創設されました。

 

一般措置 特例措置(時限措置)
事業計画の策定等 不要 5年以内*1 の特例承継計画の提出が必要
適用期限 なし 10年以内*2 の贈与・相続等
対象株数 総株式数の最大3分の2まで すべての株式
納税猶予割合 相続税:80%、贈与税:100% 100%
承継パターン 複数の株主から1人の後継者 複数の株主から最大3人の後継者
雇用確保要件 承継後5年間、平均8割の雇用維持が必要 弾力的な取扱いあり
事業継続が困難な場合の免除 なし あり
相続時精算課税の適用 60歳以上の者から20歳以上の推定相続人・孫への贈与 60歳以上の者から20歳以上の者への贈与

*1 平成30年4月1日から平成35年3月31日まで
*2 平成30年1月1日から平成39年12月31日まで

 

なお、上記の特例措置は、一般措置の特例として創設されたものですが、既に一般措置の適用を受けている場合については、一般措置から特例措置への移行(乗り換え)は認められていない点に留意が必要です。

 

中小企業のオーナー経営者にとって、自社株式に係る相続税負担は、優良企業であればあるほど深刻な問題です。事業承継税制は自社株式に係る相続税・贈与税の負担軽減に有用な制度です。港区にある当事務所では、自社株式対策として事業承継税制に関するご相談も承っております。自社株式対策をご検討されている方は、当税理士事務所へご相談ください。