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事業分離のために実務上用いられる具体的なスキームとして、会社分割もしくは事業譲渡が挙げられます。いずれの手法においても特定の事業および事業に付随する資産負債を移転させる点においては共通しているものの、税務においては異なる取り扱いを受ける部分もあるため、組織再編スキームを検討するにあたっては、それぞれの手法の特徴を踏まえた検討が求められます。
ここでは、第三者間において行われる事業の買収を目的とした会社分割と事業譲渡における税務上の相違点についてご説明します。
事業の買収を目的とした事業分離スキームの典型的な手法は、会社分割(または事業譲渡)の対価として金銭が交付される手法です。ここで、金銭が交付される会社分割においては、分割の対価として分割承継法人(買い手)の株式が交付されないことから、税務上は非適格分割として扱われます。

事業の買収を目的とした会社分割と事業譲渡の税務上の取扱いにおける相違点は以下のとおりです。
事業に付随する資産負債が包括承継により簡便に移転できることや移転資産に係る消費税の取り扱いの観点から、一般的には会社分割の方が優れているとされています。
| 会社分割(金銭交付) | 事業譲渡 | |
|---|---|---|
| 事業に係る資産負債の移転 | 包括承継 | 個別承継 | 
| 移転資産の譲渡損益 | 非適格分割のため時価譲渡 | 時価譲渡 | 
| 移転資産に係る消費税 | 包括承継のため課税対象外 | 原則として課税 | 
| 資産調整勘定(のれん) | 支払対価が受け入れた資産等の価額を超える場合の超える部分の金額は、資産調整勘定として5年間で損金算入 | |
| 移転する不動産に係る | 本則税率:2.0% *1 | |
| 移転する不動産に係る | 本則税率:4.0% *2 | |
*1 令和8年3月31日までの間に売買により所有権移転の登記を受ける土地に限り、税率が1.5%に軽減されています。
令和9年3月31日までの間に売買により所有権移転の登記を受ける一定の住宅用家屋に限り、税率が0.3%に軽減されています。
*2 令和9年3月31日までに取得する土地および住宅用の家屋に限り、税率が3.0%に軽減されています。